【会計・税務】利用価値が著しく低下している宅地の評価について

皆さまこんにちは。

 

大阪上本町の税理士法人ウィズアスの的場です。

 

以前に相続税を計算する際の相続財産やその評価についてお話をしました。

その財産の相続税計算時点の価値はいくらでしょうか?

広大地の評価が廃止され、地積規模の大きな宅地の評価へ

 

本日は相続財産としての土地の評価を下げることができる方法の一つである、利用価値が著しく低下している宅地についてお話したいと思います。

利用価値が著しく低下している宅地

 

利用価値が著しく低下している宅地の評価をする際には、利用価値が低下していると認められる部分の面積に対応する価額に10%を乗じて計算した金額を控除した金額によって評価することができます。

ここで、利用価値が著しく低下している宅地とは、利用価値が付近にある他の宅地の利用状況と比較してみて、著しく低下していると認められるものをいいます。

 

ただし、路線価又は固定資産税評価額又は倍率において、利用価値の著しい低下が考慮されている場合にはこの規定の適用はありません。適用してしまうと評価減が重複することになるからです。

(国税庁HP 利用価値が著しく低下している宅地の評価

 

高低差のある土地

 

評価対象となる宅地が周辺の宅地と比べて高低差が大きければ評価減の対象となります。ただし具体的に何メートルという基準があるわけでありません。

 

ここで、過去の判例を参考にしますと、周辺の宅地と最大で4メートルもの高低差があった宅地(この事例では対象となる宅地が高かった)について、利用価値が著しく低下していると認定されている判決があります。(国税不服審判所 平成29年4月7日裁決)

こちらの判決はあくまでも争いのあった土地の状況に応じての判断ですので一概にはいえませんし、過去の判例では評価減が認められないケースの方が多いです。

しかし、一般的なマンションのフロアの高低差が3メール程度であることを考えると、4メートルも高低差がある土地に移動することを想像した場合、土地の造成や梯子などが必要であることが分かりますよね。このようなケースにおいては、財産評価額から10%を減額することができる可能性があります。

反対に、周辺の宅地についても道路から同様の高低差があるような場合、路線価等の決定時に既に考慮されている可能性が高いです。この場合においては、評価減は適用することは難しいと考えられます。

地盤に甚だしい凹凸がある土地

 

地盤に甚だしい凹凸がある宅地の場合、土地を活用するためには平らに造成するか建築方法を考慮する必要があります。このような追加的な費用を考慮して評価減が適用される可能性があります。

震動が甚だしい土地

 

震動が甚だしい土地とは、明確な基準があるわけではありませんが、新幹線の高架線の敷地に隣接した土地等で、環境省が是正勧告している補正加速度レベル70デシベルを超えるような土地については対象となる可能性があります。

ただし、震動に関する評価減が判例で認められた事例としては、1件しかありません。(国税不服審判所 平成13年6月15日 裁決)

 

実際に鉄道騒音等を争点として争われた事例では、以下のような判決があります。

「路線価は、売買実例価額、公示価格、不動産鑑定士等による鑑定評価額、精通者意見価格等を基として国税局長がその路線ごとに評定した価額であるから、土地の取引価額に影響を与えると認められる鉄道騒音、震動、日照阻害等の環境要因については、基本的には、評定の基となる上記各価格等に反映されており、路線価は、価額に影響を与える環境要因を加味した結果となる。・・・・本件各土地の路線価は、鉄道騒音等の環境要因を加味して付されており、更にしんしゃくしなければならないほど本件各土地の利用価値が落ちているとは認められないことから・・・請求人の主張は採用できない」とされています。

(国税不服審判所 平成22年3月25日 裁決)

 

その他特殊事情のある土地

 

上記の以外の宅地で、騒音、日照阻害(建築基準法第56条に定める日景時間を超える時間の日照阻害のあるものとします。)、臭気、忌み等により、その取引金額に影響を受けると認められるものについては、評価減が適用される可能性があります。

このうち騒音とは、環境省が公表している騒音環境基準に照らして判定することになります。

(環境省HP 騒音に係る環境基準について

地域 基準値
昼間 夜間
療養施設等が設置される静穏を要する地域 50デシベル以下 40デシベル以下
主として住居用の地域 55デシベル以下 45デシベル以下
住居用と併せて商業、工業用の地域 60デシベル以下 50デシベル以下

忌み等とは対象となる土地が墓地と隣接しているなど取引価格に影響がある場合を指します。例えば、評価対象となる宅地において、取引価格に影響を与えるような死亡事故等があり、それが路線価に反映されていない場合も対象となるかもしれません。

 

 

このように不動産の評価については、評価減が適用できる場合がありますが、実際には対象となる土地やその周辺の環境ごとによって判断が異なりますので注意が必要です。

 

 

それでは、また次のコラムでお会いしましょう。

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昨日より今日、今日より明日が素晴らしい日となるように。

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