【会計・税務】贈与と名義貸しの境界線は?

皆さまこんにちは。

大阪上本町の税理士法人ウィズアス中野学です。

 

皆さまお元気ですか。

日中は、汗ばむくらいの陽気になってきましたね。

季節の変わり目は体調を崩しやすいので、十分にお気をつけください。

 

さて、今回のコラムは『贈与と名義貸しの境界線は』をテーマにお話しさせていただこうと思っております。

 

贈与税につきましては、4月24日のコラムをご参照ください。

贈与のメリットデメリット

 

 

境目である境界線を知るために、まずは定義を見ていきましょう。

 

名義貸しとは

名義貸しとは、どういった行為でしょうか。
デジタル大辞泉には、こう定義されています。

他社の取引に際し、自分の氏名や商号を貸して契約させること。

4月24日コラムをご参照いただいた方はおわかりになると思いますが、贈与の定義とは違いますよね。
では、その境界線を知るため、事案をご紹介いたします。

 

 

国税不服審判所の裁決(平成27年9月1日)

父が購入した車両について子の名義で登録されていることから、贈与によって取得したとし、子に贈与税の決定処分がくだされました。
それを不服とした子が、単なる名義貸しであって、贈与の事実はないと処分の取消しを求めた事案です。

基礎事実は、下のとおりです。

  1. 自動車ディーラー宛ての「新車注文書」には、買主・注文者を父、使用者名義を子とし注文する旨の記載がある。
  2. 購入した車両に係る自動車検査証の「所有者の氏名又は名称」欄に、子の氏名が記載されている。
  3. 車両代金は、全額父名義の普通預金口座から、自動車ディーラーへ支払われている。

 

子は、車両の贈与を受けたのでしょうか?

相続税基本通達9-9によれば、「不動産、株式等の名義の変更があった場合において対価の授受が行われていないとき又は他の者の名義で新たに不動産、株式等を取得した場合においては、これらの行為は、原則として贈与として取り扱うものとする。」とあります。

これは、財産の名義人が真実の所有者であるという経験則が成り立つことを前提として、他の者の名義で新たに財産を取得した場合には、反証がないかぎり、名義と実質が一致するものとして贈与があったと事実上推認する取扱いを定めたものです。

よって、反証として推認の前提となる経験則を妨げる事情が認められる場合には、推認が働かないこととなります。

当事案において、子の提出資料および調査結果により次の事実が認められました。

  1. 子の勤務先において自動車販売促進のキャンペーンがあり、購入車両を従業員本人名義で登録することを条件として、特典を得ることができた。
  2. 車両購入後の保険料及び自動車税は、すべて父が負担していた。
  3. 子が父と別の場所で生活していた間、本件車両は父の自宅で保管されていた。
  4. 本件車両はのちに、父の判断によって売却され、売却代金は父が受領した
    そして父は、売却した月に新しく車両を購入し、自らの名義で登録を行った。

 

そして、国税不服審判所は以下のように判断したのです。

 

  • ①の事実より、代金負担者である父がキャンペーン利用をするのは経済的に合理性のある行動といえる。
    また、キャンペーン利用条件を満たすために、子の名義を使用して本件車両を購入したことは容易に推測される。
  • ③の事実により、子が日常的に本件車両を使用していなかったことは明らかである。
  • ②、④の事実により、父は本件車両の維持・管理に必要な費用をすべて負担し、自らの判断で本件車両を売却してその代金を受領し新たな車両を購入しており、これは正に所有者らしい振る舞いであると評価できる。

よって、単なる名義貸しであり、贈与の事実関係はない。

 

裁決から判断できること

 

(2)の事案では、贈与として取り扱わない事実関係や名義貸しとなった合理的な根拠が立証できたからこそ、「名義貸し」と判断されました。
ということは、それがなければ「贈与」と判断されます。

 

 

いかがでしょうか。

 

何気なく行った行為であっても、税務上の問題が発生する行為となる場合があります。

 

まずはご相談ください。

専門家の視点で、皆さまの問題解決にご協力できればと考えております。

 

では、次のコラムでまたお会いしましょう。

 

当社は、大阪天王寺区で数十年お客様のコンシェルジュとして、お金にまつわる問題を解決してきた税理士事務所です!

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